“新卒コンサル”大量採用時代に問う──コンサルとは何か

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ここ数年、大手コンサルティング会社の新卒採用枠が大きいまま推移しています。
十数年前には100人前後だった採用人数が、いまでは300人を超えることもあります。
その背景には、時代の変化の速さや、企業が抱える課題の複雑化など、さまざまな要因があるのでしょう。

一方で、「新卒コンサル」という言葉を聞くたびに、私は少し違和感を覚えます。
大学を卒業したばかりの人たちが“コンサル”を名乗ること。
そして、彼らを大量に採用し続ける業界の構造。
そこには、かつての「提案する職業」としてのコンサルとは少し違う姿があるように思うのです。

この記事では、自分自身新卒コンサルとして働いた経験から思う、”コンサルとは何か”について少し考察してみます。

目次

“新卒コンサル大量採用”の背景

案件の急増と「とりあえず受ける」風潮

ここ数年、大手コンサルティング会社の新卒採用数は明らかに多いです。
十数年前には100人前後だった採用枠が、いまでは300人を超えることもあります。

こうした変化の背景には、企業を取り巻く環境の変化があります。
近年、時代の変化があまりに速く、企業だけでは変革を進めきれないケースが増えました。
クライアント企業は自社の業務を回すだけで手一杯で、将来の変化を見通すことも難しくなっています。
そのため、「どう変革すればいいのか」「何を優先すべきか」といった外部からの提案や支援を求める需要が高まってきました。

そこに追い打ちをかけるように「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という流行が重なり、コンサル案件の数は一気に増えたのです。
案件が増えれば、それを担当するコンサルタントの数も増やさなければなりません。
結果として、若手を多く採用し、チーム体制を拡大する必要が出てきました。
この構造的な背景こそが、新卒採用数の増加につながっているのです。

同時に、学生側の意識にも変化があります。
コンサルという職業は「高収入」「スキルが身につきそう」「成長できそう」といったイメージが定着し、いわば“とりあえず受ける”業界の一つになりました。
「何をしたいかは決まっていないけれど、ここに入れば将来につながりそう」と考える層にとって、コンサルは安心できる選択肢になっているのです。

現場における若手コンサルの役割

若手が担うのは“提案”ではなく”作業”

では、大学を卒業したばかりの若手は現場でどのような役割を担うのでしょうか。

基本的には、上司に指示された資料作成や議事録作成(AIに取って代わられそうですが・・・)、日程調整や会議室の予約といった業務であることが多いように思います。
つまり、実際にクライアントに提案する内容を考えるケースはかなり少ないということです。
※私の経験上なので、プロジェクトや会社によってはゼロではないかもしれません。

提案の方向性や内容を決めるのは、パートナーやディレクターといった上位職です。
いわゆる「コンサルらしいコンサルの仕事」をするのはその層に限られています。

コンサルはもともとコンサルは“グレイヘア”の仕事だった

そもそもコンサルティングという仕事は、“グレイヘア(白髪)”と呼ばれるような、長年の経験を積んだ人が行う職業でした。
経営や業務の現場を深く理解しているからこそ、説得力のある提案を行うことができました。

現在のコンサルティング会社でも、提案の方向性を決めているのはパートナーやディレクターといった上位層です。
つまり、今でもコンサルという仕事の中心はいまもグレイヘア層にあることがわかります。
若手は、その提案を実行可能な形に整えるための支援を担う存在のように思います。

提案よりも作業のウェイトが大きくなる構造

「コンサルらしいコンサルの仕事」ができるのが上位層であるにもかかわらず、なぜ近年、コンサルティング会社は多くの新卒を採用するのでしょうか。
それは、コンサルティング会社が提供するサービスの変化が背景にありそうです。

提案から実行まで──アウトソーシング化が進んでいる?

かつてコンサルティング会社の役割の大部分は、クライアントに課題解決の方針を提案するところまででした。
ところが近年では、「提案した内容を実行まで伴走します」というコンサルティング会社が増えています。

背景には、コンサルティング会社同士のサービスの差別化もありますが、クライアント側の状況の変化があるように思います。
企業の業務は複雑化し人員も限られているため、自社だけで大規模な変革を進めるのは難しく、「実行まで支援してほしい」という要望が増えてきました。

また、DX(デジタルトランスフォーメーション)やシステム導入といったテーマは、専門知識と膨大な作業量を伴うため、外部の力を借りるのが前提になっています。
実際、システム導入プロジェクトでは、要件定義や設計、テスト、運用準備、さらには運用までをコンサル会社が請け負うケースも少なくありません。

実行フェーズの現場

提案したソリューションを実行するフェーズには、とにかく”作業”が大量にあります。
システム導入では、ソリューションとして提示されたシステムを現場が使えるシステムにするためのヒアリングや設計、開発などがあります。
M&Aの実行フェーズでは、どうやってシステムを統合するのか、どのように業務を統合するのか、どういったルールに統合するのか、といったことを決めていく必要があります。

もちろん、この実行フェーズにおいても”提案”をする場面は小さいながらも多くあります。
”どういった業務にすべきか”といった内容や、”どういった機能にすべきか”といったことです。

とはいえ、この実行フェーズでは、毎日大量の会議も行われるため、前述の通り、会議のための資料作成や議事録作成、会議の日程調整や会議室の確保などの”作業”が大量にあります。
こういった作業を担うのが、大量に採用される”若手”たちです。
若手といいつつ、マネージャー層ですらこういった業務に従事するケースも少なくないように思います。

なぜ実行もやろうとするのか
コンサルティング会社がこのような案件を積極的に取りたがるのには、数字として見栄えが良いという理由もあるでしょう。

戦略提案のような短期案件よりも、システム導入など実行フェーズまでやり切る案件のほうが期間が長くなりやすく、かつ売上規模が大きくなりがちです。
営業的な観点からも、「提案して終わり」より「実行まで請け負う」ほうが合理的なのでしょう。

時に実行フェーズのみの案件すらもあります。
こういった案件が曲者で、実行することだけが目的となり、結局会社としてどう変革すべきなのか、そもそも変革すべきところは何なのか、というところまで踏み込めないまま進んでいくことがあります。
コンサル側は金額規模の大きい実行フェーズを進めたがり、クライアント側は投資したものを計画通りに遂行したがるため、”そもそも…?”といった議論には立ち戻ることはあまりありません。

私が思う本来のコンサルであれば、「実行フェーズに入る前に課題や変革ポイント、目指す姿の定義(中期経営計画やそれをブレイクダウンし、具体的にどのように業務を変えるか、など)をすべきである」、と提案するべきだと思っています。
とはいえ、クライアントの事情も、コンサル会社の事情も双方あるためなかなかそうもいかないようです。
理想論だけでは会社経営は進みませんからね。。。

と、いろいろ言いましたが、提案から実行までを引き受けることで、コンサル会社はもはや“高価なアウトソーサー”のような立ち位置になっているのです。

クライアントの事情

コンサルが「提案よりも作業を担う存在」へと変化した背景には、クライアント側にも事情があるように思います。

企業の業務は複雑化しリソースは限られているため、何か新しいことをしたくても、自社で進める余裕がない。
そのため、「提案をしてくれるだけの存在」ではなく、「提案から実行までやってくれる存在」を求めるようになったのです。

さらに、「コンサルが言っているから」という言葉が、社内を動かすための説得材料になるという側面もあります。
実際、大きな組織ほど、何かを変えるには稟議や承認が必要で、外部の“お墨付き”があると通りやすい。

つまりコンサルの役割が変わったのは、コンサル側が勝手に方向転換したからというだけではなく、クライアントの求めるサービスが変わった結果だとも言えます。

また、作業を肩代わりしてくれる存在としてコンサルを選ぶのには、質が高い(ように思える)からというのもあるでしょう。
コンサルは指示されたことをただやる作業者ではなく、自分で考えて動いてくれる作業者、としての立ち位置でもあるように思います。

“コンサル”という言葉が示すもの

ここまで見てきたように、コンサルティング会社の仕事は作業が占める割合が大きくなっています。
かつては、経験を積んだ“グレイヘア”が現場を理解したうえで提案を行う仕事だったものが、いまでは、若手が多数を占める“組織としての提案と実行の仕組み”になっています。

クライアントは、提案だけでなく実行まで支援してくれる存在を求め、コンサル会社はその需要に応える形で、作業や運営までを引き受けるようになりました。

その結果、コンサルという職業は「考える仕事」から「進める仕事」へと少しずつ移行してきたように見えます。
もちろん、それが悪いことだとは思いません。
時代や産業構造が変われば、求められる役割も変わります。

重要なのは、“コンサル”という言葉が今、どんな仕事を指しているのかを正確に捉えることだと思います。

「提案を行う人」も「作業を進める人」も、同じ“コンサル”と呼ばれるからこそ、新卒や転職でコンサルを志望する人は自分はコンサル会社で”何をやりたいのか?””どうなりたいのか?”を考え、それが今のコンサル会社と合致するのか、をしっかり考える必要があるのでしょう。

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